それが愛ならかまわない

「梅田事業部長……こんにちは」


 無理矢理愛想笑いを引きずり出しながら顔を上げる。


「今から食堂で昼飯かい?」


「ええ、まあ……」


 まずい流れだと直感が告げていた。梅田部長は食事が終わっている様には見えなかったし、私がたまたま一人でいるのもタイミングが悪い。
 食堂で誰かが待っていると言ってしまいたかったけれど、目的地が同じなら嘘はすぐにばれてしまう。


 部長が至近距離まで近づいてくる。それが分かっていてもどうにも避けようがない。肩に触れられた途端、いつもの整髪料の香りが鼻について、今から食事をしようというのに食欲がさらに二割減退した。
 ていうか近過ぎる。この人のパーソナルスペースどうなってるんだ。


「そうか、なら丁度良いから一緒に外に食べに行かないか?」


 嬉しそうな顔になって梅田部長が提案してくる。


 うげ。
 そう言われる事を予想はしていたものの、思わず顔を顰めそうになるのを必死で我慢した。さすがに貴重な昼休みをこの人と過ごしたいとは一ミリも思えない。というかこの香りの中で食事とか本当に無理だ。

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