それが愛ならかまわない

「えっ、いやそういうつもりじゃないんだけど」


 石渡君が咎めるような視線を向けたので安田くんが焦った顔をした。


「篠塚さん、言い難かったら俺が人事とかに話すよ?」


「えっ……大丈夫だよ、そこまでじゃないから」


 一気に話が大きくなりそうだったので思わず首を振る。
 石渡君は彼なりの正義感で言ってくれてるんだろうけれど、さすがにそこまでしてもらう訳にはいかない。自分一人がターゲットにされている訳じゃないので私の一存で動ける話でもないし。


「ならいいけど……何かあったら遠慮なく言ってくれていいから」


「……ありがとう」


 石渡君のちゃんと気遣ってくれて、何かあればすぐ手を差し伸べてくれるだろうという安心感。強引過ぎないスマートさ。彼と一緒にいれば確かに居心地はいいかもしれない。だけど多分私が本当に困った時に石渡君を頼る事はないだろうなと自分の中で結論が出てしまっている。
 同じ様に助けてもらったはずなのに、そこに付随してくる感情が椎名の時と全然違う。その事を申し訳なく思うけれど、もちろん口には出せなかった。結果私はいつもの愛想笑いで誤魔化す羽目になる。

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