それが愛ならかまわない
「えーっと、俺もしかして邪魔?」
「馬鹿、違うから。さ、飯食いに行こう」
笑顔の意味を勘違いしたのか余計な気を回そうとする安田君の腕を石渡君が捕まえて食堂へと引っ張った。
少し出遅れてしまったせいで食堂は結構な混み具合だった。何とか席を確保した所で、それぞれ料理を取りに行く。
食堂の一番の人気メニューは日替わりランチで二人はそれを選んだようだったけれど、私はそこまでの食欲は今はない。なのでトレイを持つとうどんコーナーの列に並んだ。麺類なら食欲がなくても食べやすいはずだった。
さっき梅田事業部長の整髪料臭にあてられたせいか食堂内の喧騒が耳障りで少し頭痛がする。
こめかみを押さえつつぼうっとしていたらいつの間にか列が進んで前の人との距離が開いていた。
慌てて詰めようとして軽く脚がもつれ、後ろに並んでいた人の持っていたトレイに肘がぶつかってガタンと音を立てる。料理を受け取る前でトレイに何も乗っていなかったのは幸いだった。もし既にうどんが乗っていたら大惨事になっていたはずだ。
「すみません……って、長嶺さん?」
「あれ、篠塚ちゃん。え、ずっと前に並んでた?」