それが愛ならかまわない

「てか篠塚ちゃんも後ろ俺って気づいてなかったんだ?」


「ちょっと考え事してて……すみません」


「謝る事じゃないけど、本当に目に生気がねーぞ。大丈夫か?」


「午後から大事な商談があるんで緊張してるんです」


 バイトが休みなく連勤で疲れてもいるけれど、間近に迫ったアポイントメントが原因で気負っているのも確かだった。上手くいけば年内で一番大きい契約になるかもしれない。


「じゃあそれきっちり決めてもらって、年内に忘年会兼ねてもう一回飲みに行こうな。篠塚ちゃんにはガス抜きが必要だよ」


 明確な目標があるから忙しくても充実している気分だったけれど、確かに肩の力を抜ける時間は欲しいかもしれない。情報通という事を差し引いても、話上手な長嶺さんと飲むのは楽しいし。


「そうですね、ぜひ」


「まあこっちも今やってる仕事終わったら、だな。担当してる開発案件がリリース直前で会社に連泊中だから流石に疲れるわ。あー酒飲みに行きてー。食堂にビール置いてくれりゃいいのに」

< 142 / 290 >

この作品をシェア

pagetop