それが愛ならかまわない

 さっきから繰り返している頭痛と言い、指摘の通り疲れからか体調があまりよくないのは間違いないと思う。
 夜も結局バイトの忙しさに取り紛れて食べず終いな事も多い。無理に食べようとすると胃がもたれるので翌日の仕事に響くし。


 長嶺さんにもさっき似たような事言われたなあと思っていたら、拒む間もなく左手首を掴まれた。そのまま石渡君は私の手を顔の高さ近くまで持ち上げる。


「ほら、時計緩くなってる」


 彼の言う通り、腕時計のベルトに必要以上の余裕が出来てしまって文字盤がクルクルと回っている。自分でも気がついてはいたけれど、直しに行く余裕も最近はなかった。


「まさかダイエットとかしてるわけじゃないよね?ちゃんと食べて寝なきゃダメだよ」


 そう言う石渡君の顔は真剣で、本気で心配してくれているのが分かるだけにアプローチを避けてはぐらかし続けているのが申し訳なくなる。


「最近色々忙しくて。身体が疲れてるのかなあ。とりあえず食器、片付けてくるね」

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