それが愛ならかまわない

 そう言って立ち上がった瞬間、身体の中で内臓が一気に重く沈んだような感覚がした。
 なんだろう、上手く息が出来ない。空気を吸い込んでも体内に酸素を取り込む事が出来ない。頭の中に何かが詰まったかのように重くて、眼の焦点が合わせられない。
 息苦しさに私は浅い呼吸を繰り返した。持ち上げかけていたトレイを乱暴にテーブルに戻す。丼が揺れてトレイの上に出汁がこぼれたけれど気にする余裕はなかった。


「……篠塚さん?」


 酷い耳鳴りがして周囲の雑音がやけに遠く聴こえる。石渡君に何か尋ねられたのは分かったけれど、答える事が出来なかった。目の前がやけにチカチカする。


「え、ちょっと!!」


 不意に全身の力が抜けた。咄嗟にテーブルで身体を支えようとしたけれど、手を伸ばした場所にはなにもなく指が空を切る。
 視界の端に椎名が映った様な気がした。それと同時に目の前が暗くなっていって、私は意識を手放した。











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