それが愛ならかまわない

「そうか。……石渡が相当格好良かったらしいな」


「え?」


「颯爽と抱き上げて医務室かどっかに連れてったとか」


「……へえ、そうだったんだ」


 さっきの貸出票の事を考えると安田君が医務室の鍵を借り、そこまで石渡君が運んでくれたらしい。
 もちろん感謝はするけれど、それを椎名の口から聞くのは何となく複雑だった。相変わらず表情の変化に乏しいこの人は、私の体調不良に対しても石渡君の件にしても淡々と話すので何を考えているのか全く読み取らせてくれない。


 疲れているのか伏し目がちで、それがかえって長さの強調された睫毛を眺めていると鼓動が早くなった。目が合うと心の中を見透かされている様な気がして落ち着かないのに、どうしても私はあの眼に惹かれてしまう。


「眼鏡外さないで」


 眼鏡を外そうと手をかけた椎名を見て、思わずそんな言葉が口をついて出る。


「……何で」

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