それが愛ならかまわない
眼鏡に伸ばした手を止めて椎名が聞き返してきた。そこで初めて自分が口に出していた事に気づいて焦ったけれど、今更なかった事には出来ない。
「どうしても!」
「だから理由」
「…………」
まさかその目に見られると弱いんですとか他の人に眼鏡を外した姿を見せたくないんですなんて口が裂けても言えない。
答えられずに黙っていると、呆れた顔をしてため息をつきながら椎名はそのまま眼鏡を外し、目を閉じて親指と人差指で鼻の付け根を押さえた。
仕様書とパソコン画面の液晶をずっと見つめている訳だからそりゃあ目も疲れるだろう。それは分かるのでそれ以上わがままを押し通そうとはさすがに思わなかった。
「……疲れた顔してるけどやっぱ忙しい?」
「会社に居過ぎてもう時間の感覚がない。……でも疲れてるのはそっちだろ」
眉間に皺を寄せた椎名がこちらを見る。