それが愛ならかまわない

 受話器を肩で挟み相手の声を聞きながら、共有フォルダの一覧表で東計の仕事の進捗具合を確認する。


「……申し訳ないですが確認中なので、折り返し連絡させて頂いてよろしいですか?」


 電話の途中で自分の声のトーンが変わってしまったのを取り繕う余裕すらなかった。本体に受話器を下ろし、引き剥がした指先が冷たいのが自分でも分かる。先日倒れた時とは別の意味で目の前が暗くなりそうだ。けれどこれ以上自分の仕事の尻拭いを人にさせるわけにはいかない。
 唇を噛んで井出島部長の席に向かう。


「何やらかした」


 電話での私の様子を多分部長も見ていたんだろう。こちらが口を開くより早く先手を打たれた。普段は大らかで明るい部長の目が厳しい。
 トラブルの気配を感じてか、フロアの雑音が少しずつ減って皆の視線がちらほらこちらに向けられ始めているのが分かる。けれど見られているからと言って躊躇する時間さえも今はない。


「東計さんから追加の依頼が届いていたのに、私の不注意で受領しない状態のまま放置してしまいました。申し訳ありません!」


「期日は?」


「明日です」

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