それが愛ならかまわない
「いい加減にしてよ!私あなたと結婚したいなんて思ってない!」
伸びてきた手を力いっぱい振り払う。
私の大声に道行く人の何人かが振り返ったけれど、そんな事どうでもいい。
「私達別れたよね?こんなとこまで来て大事な話があるって言うから何かと思えば。その価値観が合わないから無理なの。付き合ってる間もあなたと結婚したいなんて思ったことない」
きっちりと後腐れなく別れたつもりだったのに。必要以上に拗らせたくなんてなかったのに。どうしてこうなるんだろう。
「僕達は上手く行ってたじゃないか。喧嘩だってしたことないし……」
「我慢してる事ならたくさんあったけど、それを口に出さなかっただけ。あなたのご友人にやたら紹介されまくるの嫌だった。私はあなたのアクセサリーじゃない」
主旨の分からないパーティーに何度も連れて行かれたけれど、ただ私を自慢したいのが見え見えだった。綺麗な彼女だねとか言われて私より嬉しそうだったし。やたらとたくさんの人に紹介され名刺は山程もらったけれど、二度会った人は一人もいない。
「お店で店員さんに尊大な態度取るの物凄く感じ悪い。家格がどうとか言う癖に食べ方も喋り方もなってない。事あるごとに僕は会社のトップだからって言うけどまだ大した実績もないくせに自慢してるの鬱陶しい!」