それが愛ならかまわない
「甘いとか甘くないとかじゃなくてやるかやらないかって言ったらやるだけ。仕事だし穴開ける訳にはいかないんだから」
立岡さんの吐き出した紫煙がゆらゆらと揺れながら喫煙ルーム内に設置された換気扇の方へと流れて行く。
「個人的な感情どうこうで仕事選んだりしない。福島だってそうだろ。もし福島が技術職で今日特に予定がなかったら自分がやるってきっと言ってるよ」
「買いかぶり過ぎじゃないの。私結構篠塚さんに腹立ててる事多いから、手が空いてても自分から助けるなんて言わないかも」
軽く苦笑いしながら福島さんが肩をすくめる。
福島さんが私のやり方に思う所があるというのは嫌というほど分かっているので今更これくらいで傷ついたりはしないし、でも本当は立岡さんが言う通り目の前にやるべき仕事があるのに放置出来る様な人じゃない事は私にも分かっている。
「文句言いつつ結構世話焼いてるくせに」
「そりゃ一応同じ部署なんだから。でもまあ彼女からしたら私は特に同性だし営業のライバルでしょ。そのお陰で変にベタベタして来ないのは助かってるけど」
「そういや篠塚って誰にでも愛想良くしてる様に見えて同じ営業とは結構微妙に距離置いてるな。大友とかも美人な分どっちかっていうと近寄りがたい感じするって言ってたし」