それが愛ならかまわない

「まあ誰にだってミスはあるさ。次からは気をつけて」


 あっさりそう言って、再度頭を下げた私の肩をポンポンと叩きながら梅田部長は口を開けて笑った。


「あまり気に病まないように。切り替えて篠塚君らしく仕事で取り返してくれたらいいから、ほらそんなに深刻な顔しないでくれよ」


 まさかこの人に慰められるとは思わなかった。
 きっとありがたいと思うべきなんだろう。けれどやっぱりベタベタ触られつつ言われても嬉しくないし、残念ながらそれで心が晴れる訳でもない。


「篠塚君はムードメイカーだからなあ、いつでも嫌な顔せずにニコニコしてくれてるからいいんだよ。君の笑顔で士気が上がる人間もいる、若い人と触れ合ってるとパワーがもらえるというかね」


 何それ。あんたの気分を上げる為に笑顔でいる訳じゃないし、そもそも物理的に触れ合う必要なんかない。
 そう言いたかったけれどさすがに我慢した。さすがに浅利さんの時の様に切れて喚き散らす訳にはいかない。
 パワーチャージどころか事業部長に触れられている状態で私が発しているのは苛立ちと怒りの負のオーラ以外の何物でもないはずなのに。
 福島さんに言われた、私の愛想笑いがこの人を増長させているという言葉を思い出す。雰囲気を壊さない為なら、円滑に仕事を進める為なら、嫌な顔は見せず作り笑顔であしらう多少の我慢くらいなんて事はないと思っていたけれど、確かに彼女の言う通りなのかもしれない。

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