それが愛ならかまわない

「いえ……篠塚?」


「え?」


 定期入れを片手に同じタイミングで改札を通ろうとしたのは椎名だった。


「なんだかんだ色んな所でよく会うな」


 椎名が薄く唇だけで笑う。


「運命的、とか言ってみる?」


 皮肉だというのは分かっているけれど、そう言えたらどんなに楽だろう。
 私が嫌な目に遭う時。落ち込んでいる時。人に見せたくない表情しか作れない時に限って椎名はいつもそこにいる。おまけに忠告を突っぱねて捨て台詞で逃げ出して以来の再会だ。このタイミングの悪さは運命的なんてものじゃなく、とにかく私達の相性が悪いって事なのかもしれない。


「……何でこんな時間にこんな所に」


「リリース日で昨日も帰ってなかったから。これから帰って寝る」


 どうやら同じ様に泊まり込みで仕事をしていたらしい。

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