それが愛ならかまわない
いずれ辞めなくてはならない身としてはそう言って貰えると頼もしい。特に最近は自分が他人にどう思われているかと色々考えさせられた所なので、今こんな風に言われるのは素直に嬉しかった。
「時間遅めだけど大丈夫?」
「終電に間に合うし家は駅から近いんで大丈夫です。コンビニやファミレスやカラオケの深夜バイトだと朝までになっちゃうから家からOKが出なくて。この時間帯ならサークルとかの後でも入れて電車なくなる前に帰れるんで助かります」
必ず駅まで迎えに来るし、うちの家族過保護なんですよ、とあかりちゃんが少し唇をとがらせる。大人っぽく見えていたけれどそういう表情をすると歳相応だった。
「まあ女の子だしね、家族が心配するの当然かも」
「末っ子だからですかねー。莉子さんこそ遅い時間に働いてたら心配されません?」
「はは……私はあかりちゃん程若くないし、今更家族も心配なんかしないよ」
笑顔を作ってそう言ったけれど、自分の口から出た言葉がチクリと心の中を刺す。
母親からの連絡を無視し続けていたら、最近は着信がある事すら滅多になくなってしまった。そろそろ諦められたのかもしれない。
夏季休暇や正月休暇、大型連休は殆ど単発バイトをしたりしていたので、最後に実家に帰ったのはいつだっただろう。帰省したとしてもローンの件が母と私の間には常にのしかかっていて、変にぎこちなく当たり障りのない会話しか出来なくなってしまった。弟ともかなり長いこと顔を合わせていない。ローンの返済が終われば、バイトの必要がなくなるから帰省の時間も作れる。そうすればもっと自然な関係に戻れるだろうか。