それが愛ならかまわない

「たまに酔っ払って絡んでくるお客さんいるけど、あしらえそうになかったら私でも小野さんでももちろん他の人でも助けを求めてくれていいからね」


「場所柄酔っ払いは多そうですよね、この辺。覚悟はしてるんですけど、手に負えないと思ったらSOS出します。でも、篠塚さんは平気なんですか?」


「私結構長く働いてるしね。酔っ払いもセクハラ親父も大概は適当に相槌打って流しとけば満足してくれるし、慣れちゃった」


「んー、でも慣れても不快なものは不快でしょう?」


 あかりちゃんの言葉が正鵠を射る。
 酔っ払った客に聞き取れない注文を何回も訊き返すのも、梅田部長のセクハラを笑いながら程々で交わすのも、慣れてしまった。あしらい方も身についている。それでも不快に思わなくなったかと言うと、決してそんな事はなくて。


「まあ、もちろん気分良くはないけどね」


「はっきり拒否されないと調子に乗るっていうかむしろ受け入れられてるって勘違いする人も多いですもんねー。酔っ払ってると尚更遠回しに言っても通じなかったりするし」

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