それが愛ならかまわない

 あかりちゃんが言った事は福島さんに言われた事と同じ意味だ。歳下の彼女でさえ分かっている事を最近になって思い知った自分に内心苦笑する。


 彼女の言葉に小野さんがうんうんと頷いていると、ドアが開きお客さんが入って来た。三人で「いらっしゃいませ」と声を揃えた後、早速あかりちゃんが接客を始める。困った事があれば助け舟を出そうと眺めていたけれど、積極的だし手際も良い。充分戦力になりそうだった。


「中々良い人材でしょ?妥協しなくて良かったわー」


 隣に立つ小野さんが耳打ちしてくる。


「基本莉子ちゃんと同じ日に入ってるから。しっかり仕込んでね」


「ご期待に添えるように頑張ります」


 私がここで働く期間はもう多分そんなに長くない。辞めたとしてもきちんと店が回る様に、小野さんが負担を背負う事のない様に、あかりちゃんには頑張ってもらわなくてはならない。
 お世話になった分、少しでも返せるものがあればいい。そんな風に思いながら、私は焼き菓子の詰め合わせにリボンをかけ始めた。




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