それが愛ならかまわない

* * *




 ビル内に入った時もホッとしたけれど、さらにフロア内は暖かい。パソコン等機器の為にエアコンは温度を低めに設定されているはずだけれど、それでも冷たい風が吹き付ける会社の外やひんやりとした廊下と比べるとずっと快適だ。
 日中も寒いけれど夕方になるとさらに気温は下がるし、おまけにオフィス街はビル風が容赦なく吹き付ける。外出から帰って来た私は首に巻いていたストールを外し寒さに縮こまっていた首を伸ばしながら、溝口さんの机のチェックをした。昼過ぎに置いたメモと書類がそのままの形跡で残っている。もう定時間際だというのに、どうやらまだ彼女の目には触れていない。


「お帰り。この時間なら直帰すれば良かったのに。今朝からずっとその辺ウロウロしてるけどどうしたの?」


 福島さんが座ったまま顔だけこちらに向けて言った。
 確かに外出先から直帰しても良かったのだけれど、どっちにしても今日はバイトがあるし、週末なので片付けられる仕事は片付けておこうと戻って来た。


「ああ、溝口さんか立岡さんに話があるんですけど午後からずっと離席してるなあと思って」


「溝口さんなら今日は帰社して会議と研修。今回立岡君達も参加させてもらうとかで今日はチームごと戻らないはずだけど?」

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