それが愛ならかまわない

「えっ……」


 福島さんの言葉通り、この島だけごそっと人がいない。午後に入って何となく静かだとは思っていたし、ミーティングならその内戻って来るだろうとスケジュールもちゃんと確認していなかったけれど、どうやら自社研修の日だったらしい。私も今日はずっと動いていたのでちゃんと気がついていなかった。


「緊急の案件でもあるの?」


「年明けに上げるはずだった依頼を決算の関係で一部の軽微な修正だけ年内に前倒しにして、残りは依頼切り直したいって言われたんです。溝口さんが作業してくれてるんでリスケの相談しようと思ったんですけど……来週中に返事欲しいって言われてるんでもう週明けにします」


 チームでの研修ならその後打上げに流れ込む可能性が大きいはずだ。真面目な溝口さんだし、今連絡でもしたら会社に戻って来かねない。折角の金曜日なので邪魔はしたくなかった。私自身もバイトがあるのでどちらにしても今日はあまり残れないし。


「……この間のセミナーの件と言い、何か少し落ち着いたと言うか、切羽詰まってガツガツしてる感じ減ったね」


 自席に戻ろうとした私を見て、福島さんが少し目を細める。


「え?」

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