それが愛ならかまわない

 小野さんに言われ、あかりちゃんを伴って裏口から出る。
 ちらっと眼を向けると、表の通りは金曜と言う事もあって人通りが多い。たまたま今は客足が途切れたけれど、今夜はまだまだ忙しそうだった。


「このゴミ箱の逆側に重ねて置いておく事になってるから。十段以上は積まないようにして、その場合は分けて置いてね。出しておきさえすれば業者の人が勝手に持っていってくれるから」


「はい」


「じゃ、戻ろうか。やっぱ外は寒いねー」


 あかりちゃんの肩を叩き、店内に戻ろうとした丁度その時。


「……え、もしかして……」


 背後から聞き覚えのある声がした。その声が誰の物かを悟った瞬間、背中に感じた冷や汗と共に鼓動が早鐘の様に打ち始める。急に表情の強張った私を見て、あかりちゃんが怪訝そうな顔をした。
 振り返るには、結構な気力が必要だった。錆びついた歯車の様にぎこちない動きで声のした方に顔を向ける。


「……篠塚さん?」

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