それが愛ならかまわない

「こんな所で何してるんですか」


「……これは」


 制服を着ている私は、どこから見てもバイト中だ。


「最近篠塚さんが体調崩してたのってバイトなんかしてたからですか?仕事の後でこんな立ち仕事してたらそりゃ疲れますよね」


 溝口さんは私から眼を逸らさない。
 立岡さん達は私に、というよりむしろ溝口さんの勢いに驚き戸惑った表情で口を開きあぐねていた。
 当たり前だ。協力会社の人間が社員を咎めるなんて普通はしない。


「篠塚さん、仕事丁寧だし尊敬してたのに……」


 くしゃりと溝口さんの顔が歪む。
 その瞬間、なんとなく分かってしまった。
 いつ何がきっかけかは不明だけれど恐らく彼女は私がここで働いているのを事前に知っていて、あえてここに皆を連れて来た。偶然の遭遇じゃない。これは意図的な告発だ。
 尊敬していたという言葉は嘘じゃないと思いたいけれど、だからこそ副業なんてしている私に幻滅したのかもしれない。純粋で潔癖だったからこそ、多分溝口さんは私が許せない。
 そう言えば最近態度がおかしかった事を思い出す。彼女の会社がこの近くにあるなら、気づかない内に目撃されていた可能性がある。

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