それが愛ならかまわない
……え?
ニッコリと笑って小野さんが言う。
「最初は仕事忙しいからって断られてたんですけど、身内だからって無理矢理頼み込んじゃって」
「……身内?」
「叔母なんです。姪がいつもお世話になっております」
きっぱりと言い切ってに頭を下げる小野さんに何も言えず、その場にいた全員が無言で立ち尽くす。溝口さんは口を中途半端に開けたまま、呆然としていた。
その堂々とした様子はとてもじゃないけれど咄嗟の誤魔化しのようには見えない。私自身も、否定はもちろん口すら挟めず、ただ小野さんを見つめるしか出来なかった。
ただ分かるのは、小野さんがこんな事を言ってくれているのは間違いなく私を庇う為だという事だ。
「ありがとう、莉子ちゃん。新しい子も慣れてきたし、もう手伝いは今日までで大丈夫」
笑顔のまま軽く肩を叩かれる。
嘘までついて庇ってくれるのは小野さんの優しさで。
目頭がじわっと熱くなって来たけれどここで泣いてしまっては台無しなので、溢れ出させてしまう前に瞬きをして私はその熱を逃がした。