それが愛ならかまわない

「……そういう事ならまあ、な……」


 立岡さんが頭を掻きながら天を仰ぐ。


「もう『親戚の手伝い』も終わったみたいだし。篠塚も仕事に集中出来るよな」


 目が合った立岡さんは、眉を下げて少し困った様に笑ってくれた。
 きっと立岡さんだって小野さんの話を完全に信じている訳じゃない。と言うか間違いなく嘘だって気づいてる。けれど多分見逃してくれると。部長や人事に報告したりして問題にはしないって言ってくれてるんだと思う。
 そもそも溝口さんが声をかけなければ、きっと立岡さんは気づかなかったふりをしたはずだ。私だって、同僚の誰かがバイトしてる事を知った所で会社に報告したりはせず黙っておく。それをあえて『正論』で咎めようとした溝口さんの手前、看過する事が出来なくなっていた所を、小野さんが身内の手伝いという落とし所をつけてくれたので乗る事にしたんだろう。


「そんな……!」


 溝口さんが食い下がる。


「勤務中じゃないし、親戚の手伝いする事まで咎められないよ。うちの会社はね」


 立岡さんが『うちの会社は』を強調してやんわりと話を打ち切った。そう言い切られてしまうと、溝口さんはきっとそれ以上何も言えない。

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