それが愛ならかまわない
「じゃあ篠塚、また来週な。さー打上げ行こう。吉田君、幹事さんが先に行ってくれてるんだろ?待たせちゃ悪いし、社長さんが着く前に俺達が先に到着してなくちゃ」
立岡さんは軽く手を振ると、皆を促して背を向けて通りの向こうに歩き始める。
溝口さんは唇を噛んでしばらくそのまま立ち尽くしていたけれど、無言のまま踵を返して走り去って行った。
誰の姿も見えなくなった所で私はその場にしゃがみ込んで舌を向き、大きく息を吐いた。
緊張の解けた身体にそれ以上力が入らない。一度早くなった鼓動は急には元に戻れず、今もまだ心臓がバクバク言っている。
「嘘も方便ってねー、姪っ子ちゃん」
小野さんが私に手を差し伸べて、笑いながら言った。
「すみません、変な嘘つかせて……」
「いやー私の独断だし。とりあえず穏便に解決出来て良かった。莉子ちゃん、彼氏とあかりちゃんに感謝しなよ?」
「え……彼氏、ですか?」
話が見えなくて言われた言葉をそのまま繰り返す。