それが愛ならかまわない
「そうそう」
私が昼間は会社勤めで、夜だけここでバイトしてるなんて事を知っている人間は限られている。付き合っていた人にだって殆ど言わなかった。まさか浅利さんじゃないだろうから、考えられるのはただ一人で。
「あかりちゃんの苗字って……」
「椎名灯ちゃん。莉子ちゃんの彼氏の妹でしょ?」
「────!!」
うちの店は名札をつけないので、『あかりちゃん』という呼び名を聞いてからは彼女のフルネームを特に気にした事がなかった。
晃と灯。知ってから考えてみれば、確かに兄妹っぽい雰囲気のある名前ではある。それにあの睫毛の長くてどこか色っぽい眼は、椎名のそれとよく似ていた。
「いえ、彼氏じゃないんですけど……」
「え、そうなの?ごめん、私てっきりそうだとばっかり」
「あの、それよりストーカーって何の事ですか?」
「少し前にお店入ってもケーキ買わずに莉子ちゃんの事を聞いてくる客がいたんだよね。適当にはぐらかしたら店の外ずっとウロウロしてるし。でも丁度灯ちゃんの面接の日だったかな?道案内してきたお兄さんが見つけて何か外で話してたよ。それ以来来なくなったら撃退してくれたんだと思ったけど、彼氏じゃないって事は違うの?愛されてるなあって感心しちゃった」