それが愛ならかまわない
「改めて、挨拶に来ます」
「うん、待ってるよ。灯ちゃんのお兄さんとの詳しい事、また教えてね?」
意味有りげに笑って、お客さん増えて来たし灯ちゃんがそろそろパニック起こすかも、と言いながら小野さんは店の中に入っていった。
クビを宣告された私は誰かに事情を訊ねられる前に、手早く着替えて自分の荷物を片付ける。色々思う事はあるけれど、それは後回しだ。
「莉子さん!」
丁度店を出ようとした時、灯ちゃんが走り出てきた。小野さんと入れ替わりで、少しだけ時間をもらったらしい。
「余計な事して、すみませんでした!」
長身の彼女が髪を揺らして勢いよく頭を下げる。
「莉子さんが昼間働いてるのは知ってたんですけど、口止めもされてたんです。小野さんにバラしちゃったのは、完全に私の独断で……」
「助けてもらったのは私なんだから謝らないで。灯ちゃんのお陰で、事が大きくならずに済んだ」
本当に灯ちゃんの機転がなければ、溝口さんをどう抑えられたか分からない。灯ちゃんと言い小野さんと言い、感謝してもし足りない。