それが愛ならかまわない

「あのっ、ここ紹介してくれたのはあき兄ですけど、前に言った通り親と私の条件に丁度合ってたからで、無理矢理とかじゃないですからね!あと、あき兄って大袈裟なくらい嫌そうな顔したり皮肉っぽい言い回しよくするんですけど、あれ基本的に全部照れ隠しですから」


 これだけは伝えておかねば、という様子で灯ちゃんは前置きもなく早口にまくし立てる。
 椎名は私の事を一体どう彼女に伝えていたのか気になったけれど、時間に余裕が無いのでそれを訊ねるのは諦めた。


「あの人、クール気取ってるけど、本当は不意打ちに弱いんで。あと、意外と優しい所もあるんです」


「────うん。ありがとう」


 言わなきゃいけない事はたくさんあるけれど、今はそれしか言葉にならなかった。私が頷くのを見て灯ちゃんはニコッと笑って親指を立ててくれた。ゴーサイン。
 小野さんの呼ぶ声がして、慌てて彼女は手を振りながら店内に戻って行く。その姿がドアの向こうに消えるまで見送ってから、私も身体の向きを変える。


 どうして、一人で何でも解決出来るって思ってたんだろう。
 どうして、誰にも頼らず生活しているなんて勘違いしてたんだろう。
 あちこちで失敗して迷惑をかけて、見えない部分で支えられて。でもそれは決して悪い事でも情けない事でもないんだと、今更ながらに思う。
 意地とプライドの塊で、何でも自分の力で出来ていると思い込んで、周りの優しさに気づかなかった今までの自分の方がよっぽど格好悪い。
 自分の至らなさを認めて、助けてくれる人にきちんと感謝して。本当はずっと、そうするべきだった。

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