それが愛ならかまわない
繋がるやいなや間髪入れず尋ねた私に、石渡君が電話越しでも戸惑っている様子が伝わってきた。私と椎名との接点なんて同期だという以外知らないはずだし、当然だ。
それでもどうしても今必要だった。躊躇いなんてなかった。
冷静に考えれば石渡君に訊ねるのは酷かという気もするけれど、最初にかけた長嶺さんには繋がらなかったので、後は石渡君くらいしか椎名の番号を知っていそうな知り合いが思い浮かばない。まさか溝口さんに訊く訳にもいかないし。
『知ってるけど……何か用事?』
「うん、ちょっとどうしても伝えたい事があって。私彼の連絡先知らないから」
『……』
「石渡君?」
『あ、いや……分かった。今から送るよ』
「ごめんね、ありがとう」
察しが良く、空気の読める石渡君は私の勢いに何かを察したらしい。少しトーンが下がっていたけれど、それ以上何も言わず通話は終わった。
はっきり言われた訳じゃないのではぐらかし続けて来たけれどそれが心苦しかったので、今の電話で何かを感じたならそれをきっかけに切り替えてくれたらいいと思うのは私のエゴだろうか。いい人、だとは思う。思うからこそ彼が向けてくれる好意に応えられない事が申し訳ない気持ちになる。