それが愛ならかまわない
送られてきたメッセージを見て焦っていたはずの指の動きが止まった。そこに表示された十一桁の数字には何故か見覚えがあった。しばらく考えた後、画面を切り替えて不在着信の通知を開く。
何度かあった謎の着信。北見先輩からかもしれないなんて怯えて、出る事もかけ直す事もしていなかったのに。
まさか、あれが椎名の番号だったなんて。
会社で言い争った日の帰宅後とか。タイミングを考えれば、確かにかけてきたのが椎名であってもおかしくはない気がした。小野さんの話によれば北見先輩に椎名が何かしら言ってくれていたらしいから、結局北見先輩はサークルメンバーに探りは入れても具体的な行動に移した訳じゃないんだろう。椎名と北見先輩の間にどういう会話があったのかは気になるけれど、今はそれを考えても仕方ない。
表示された番号をタップして、電話をかける。
コール音が二回、三回。
かけてきた履歴があるという事は、椎名は私の番号を知っているはずだからこれが誰からの着信か分かる。果たして出てくれるだろうか。
留守番電話に繋がるのも覚悟しながら、私は息を潜めて電話が繋がるのを待った。
『はい、もしも……』
「椎名?今どこ?」
『……篠塚?』
椎名の言葉をみなまで聞かず、被せるように言った私に椎名が一呼吸置いて問い返してくる。