それが愛ならかまわない

「ここ来る直前に、灯から連絡来た」


「……」


 兄妹だと言うのは分かってはいたけれど、実際に椎名の口から灯ちゃんの名前が出るのは何だか少し不思議だった。二人は普段どんな風に会話をするんだろう。


「バレて、辞める事になったんだって?」


「うん。……で、小野さんと灯ちゃんから色々聞いた。本当にありがとう」


 ようやく少し素直な言葉が口をついて出る。


「……俺は妹にバイト先を紹介しただけだから」


「でもその灯ちゃんのお陰で今日も何とか収まったし。みっともない所見せてばっかりでごめん。まあいつも間の悪い椎名もさすがに今日はその場にはいなかったけどさ」


「みっともない所ばっかり、か……篠塚は間が悪い間が悪いって言うけど」


 そこで椎名は言葉を切ってチラリと横目で私を見た。話が切り替わった事を感じて、途端に鼓動が早くなる。

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