それが愛ならかまわない
何度も言うけどその流し目は本当に卑怯だ。眼鏡のレンズの向こう。長い睫毛に縁取られた切れ長の眼が私の視線をしっかりと捉える。
「そういうタイミングに俺がいるのは、"間が悪い"んじゃなくて"縁がある"って言うんじゃないの」
「……」
縁。
やっぱり。
それって。
つまり。
「惚れてもない相手の為にこんなに面倒臭い事するかよ」
椎名が親切で献身的なタイプかと言われたら違うんだと思う。見たままの温度が低くて面倒臭がりで他人に積極的には関わろうとしない、それは確かに椎名の性格で。
でもそんな彼が無茶苦茶な誘惑に乗ってくれたのも。何も言わず北見先輩を牽制してくれたのも。バイト先に灯ちゃんを送り込んでくれたのも。その理由がたった一つ、私の求めてる答えなら。
「回りくどい言い方はいいから、はっきり言って欲しい」
「結構はっきり言ったつもりだし充分だと思うんだけど」