それが愛ならかまわない
「!」
慌てて振り返ると、唇を噛んで真っ直ぐに立っている溝口さんの姿が目に飛び込んでくる。
「……ちょっとこっち」
廊下は人目につきやすいので、私は彼女の腕をとってすぐ近くにあった無人のミーティングルームのドアを開けた。
ここなら話を人に聞かれる可能性はない。ただ今は使われていなくても、どこで予約が入れてあるかは分からないのであまり長居は出来ないけれど。
わざわざ私から言うのもどうかと思って、椎名の事については何も言わないで来た。でも溝口さんから切り出してくれるなら、このままモヤモヤした気持ちを抱えておくよりはっきりさせておきたい。例えそれが私の自己満足でしかないとしても。
「……ごめん。溝口さんに訊かれた時は付き合ってなんかなかったし、椎名に恋人がいたかどうか知らなかったのは本当なんだけど。今は……」
「私、見たんです」
どう言おうか迷って言葉に詰まった瞬間、溝口さんが重ねる様に口を開く。