それが愛ならかまわない
「……思わずカッとしてあんな風に誘導して暴露してしまったけど、冷静になって考えてみたらやり方が卑怯でした。立岡さんがああいう風に言ってくれて本当に良かった。すみませんでした」
溝口さんが頭を下げる。
改めて責められる事も覚悟していた私は、突然謝られて逆に慌ててしまった。
「いや、悪いのは私の方なんだから溝口さんが謝らないで」
「自分がみっともない上に情けなくて落ち込んだし、今も周りに気を遣わせてしまっているし。だからはっきりさせてすっきりしたいんです。篠塚さん、椎名さんと付き合ってるんですか」
顔を上げた溝口さんの視線が正面から私を射抜く。
あの日以降も彼女の態度が堅かったのは、私に対する悪感情のせいではなく彼女自身の自己嫌悪のせいだった。溝口さんの真っ直ぐさを舐めていた自分が恥ずかしい。福島さんは私と彼女を似ていると言ったけれど、やっぱり全然違うと思う。私にここまでの率直さはない。
「……ごめん。溝口さんに椎名に彼女がいるのかって訊かれた時に私がそれを知らなかったのは本当。溝口さんが目撃した二人で歩いてた時も、別にデートしてたとかそういう訳じゃなくて偶然家が近所だからだし、睡眠不足を心配してもらっただけ。でも今は……椎名の事が好きだし、この間から付き合ってる」