それが愛ならかまわない
「最近辞めて、今は仕事一本です」
なんだかこの距離感が今は一番ちょうど良い気がする。
「そっか、辞めたのか」
「少し前に根を詰めすぎて体調崩したんで……今はもう元気ですけど」
「俺もあの直後に色々トラブルが重なって暫く仕事が忙しくてね。やっと最近落ち着いた所」
痩せた事や雰囲気から見ても、きっと本当に忙しかったんだろうという気がした。笑い方が私の知っている彼と全然違う。ギラギラした上昇志向の強い雰囲気は抜けたけれど、どこか落ち着いていて頼もしさを感じる。
「うちはまだ小さい会社だから人も足りてないし、社内の整備も放置してあちこち走り回ってさ。仕事であんなにハードな思いをしたのは初めてだったよ」
別れから時を置かず再会していたら、こんな風に会話は出来なかったんじゃないだろうか。むしろ顔を見た瞬間に回れ右して逃げ出していたかもしれない。
あの頃は私自身、自分にプレッシャーをかけまくって神経質になり過ぎていた。浅利さんに投げつけた言葉は八つ当たりの要素も多分に含んでいたはずだ。