それが愛ならかまわない

 あの時の私達はお互いの存在と気持ち以上に優先する事があって、それが食い違っていたから続かなかったんだろう。


「次に付き合う彼女の時は彼女がどうしたいかちゃんと確認してお家の方にもちゃんと説明してあげて下さい。同居で花嫁修業って誰にとっても結構厳しいですよ」


 大きなお世話かもしれないなあなんて思いながら、冗談ぽく聴こえる様に笑って言ってみる。


「そうするよ。しばらくは仕事に打ち込むつもりだけどね。うちはまだまだ小さな会社だから。……まあ恋愛に目を向ける余裕が出来る頃にはもっと年食ってるだろうから誰にも相手にされないかもしれないし」


 付き合っていた当時に浅利さんからこんな自虐の言葉を聞いた記憶はない。不遜なくらいの自信家で、有言実行の人だった。
 仕事でトラブルがあったと言っていたけれど、彼も色々考えて、そして変わったんだろうか。私がそのきっかけの一つであるのなら光栄だと思う。


「浅利さんこれから今よりもっとモテるようになると思います」


 それは偽らざる本心。
 やっぱり私は、男運がないわけでも男を見る目がないわけでもなかったんだ。そう思ったけれど、もちろんそこは口にしない。
< 267 / 290 >

この作品をシェア

pagetop