それが愛ならかまわない
「……いや。いやいやいやいや。だって一度もそんな雰囲気になった事ないよ?」
「でも無意識で信頼してる事は間違いないよな」
確かに信頼はしてるけど、恋愛とは全く別のベクトルなのに。
目こそ合わせてくれないものの、椎名の表情は平然としていて嫉妬にかられている様には見えない。妬くならもうちょっとわかりやすく妬いて欲しい。
「何なに、俺の話?」
「長嶺さん!!」
私と椎名の声がハモる。
背後から私たちの間に姿を見せたのは当の長峰さんだった。話に割り込んでニヤッと笑った長嶺さんは、矢吹さんに「生一つ」と言いながら私の隣のカウンター席に回り込んで腰をかける。そう言えば前にもここでこんな並びで座ったなあなんて事を思い出した。どうやらあの時以来、この店を気に入って既に何度も来ている常連客らしい。
「俺が篠塚ちゃんと?んー、可愛いけど恋人にしたいってよりは妹って感じかな」
そうそう。交友範囲の広さや社交性には感心するし尊敬しているけれど、恋愛感情とは全くの別物だ。