それが愛ならかまわない

「だって俺奥さんいるし」


「は?」


「えええええっ?」


 椎名と私が同時に声を上げる。


「あれ?言ってなかったっけ?もう五年くらい経つけど」


 長嶺さんはしれっとした顔で言う。


 聞いてません。初耳です。
 大体同じ部署で毎日顔合わせてた椎名が知らないって言うのに、私なんかが知っているはずがない。社内の情報に詳しい長嶺さんは人間関係の噂を含めて色々な話を教えてくれたけど、自分の事を語ってはくれなかったし。大体五年前って私達が入社するかしないかの頃じゃないか。


「家族が待ってるのにあんなに飲み歩いてたんですか」


 椎名が呆れたような声で言う。
 そうそう、それ。毎日のように出歩いて酒を浴びてた人が妻帯者だなんて普通思わない。

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