それが愛ならかまわない
「見た事もない部屋に引っ越しなんて考えられません」
「……今からうち来る?」
「喜んで」
その返事に、長い睫毛に縁取られた眼を細めて椎名が笑う。
自ら眼鏡を外したのに、眼が合った瞬間しっかり私の鼓動は高鳴り始めて改めて自分の単純さを思い知る。
「……篠塚って俺の眼、好きだよな」
さっきの反撃のつもりか、唇の端を上げて椎名が笑った。
私がその眼に弱い事、バレてる。
「……そうだなあ、じゃあご飯は椎名オススメのお弁当買って行こうか。ついでにデザートでケーキ買ってよ。今日って灯ちゃんシフト入ってるのかなー」
「スルーかよ。ってかさすがに二人で弁当は……」
「食べてみたかったから丁度良いでしょ。外食するよりお金かからないし節約しなきゃだし。合理的合理的」