それが愛ならかまわない
「でもまあその前に、引っ越すならちゃんと報告しろよ」
「え、誰に?」
「母親。さっき着信鳴ってた」
「……!」
すぐさま身体を起こし、ベッドの脇に置いていた自分の携帯をチェックする。確かに着信履歴に母の文字があった。ずっと無視し続けていたので、かかってきたのは久々だ。
「いいよ、別に。今の住所だって別に来た事とかないし。椎名の親が灯ちゃん心配するみたいなそんな関係じゃないから」
母親だっていい加減諦めているはずだ。お互い不干渉で、平和にやってるならそれでいい。
「良くない。家賃浮いたら多分バイト代注ぎ込むより早く返済終わるだろ」
「いやでも引っ越すなら家賃は半分……」
「要らない。先に篠塚の中で燻ってるそれが片付かないとずっと卑屈になったままなんだからさっさと片付ければ」