それが愛ならかまわない
確かに返済終わるまでは、というのが自分の中で喉に引っかかった魚の骨の様に存在を主張し続けているのは確かだけれど。さすがに椎名にはそんな事はお見通しの様だった。
「いずれ挨拶いかなきゃいけない時が来るんだから、その前に関係改善しといてもらわないと」
割と重要な内容を何でもない事の様にさらっと椎名が言う。こういう時には一切照れないのが不思議。
そしてそれは、やっぱりそういう意味ですか。
「……えーと、それはちょっと気が早くない?」
「まあもちろん今すぐとは言わないけど」
浅利さんにプロポーズめいた事を言われた時にはまだ結婚したいわけじゃない、なんて反発心の方が強かったのに、いつの間にか私の心も随分軟化した様だった。
口では裏腹な事を言っていても、椎名にはすぐに心の内を見透かされてしまうから。取り繕う必要のない居心地の良さが、私の頑なさを解したのかもしれない。