それが愛ならかまわない

 本音を言うと私だってさっさと仕事を終わらせて帰りたい。九時からバイトも入れているし。
 けれど、今日はこの件の方がつくまでは帰れそうになかった。バイトの開始時間に間に合うように祈るだけだ。


「夕方試験行く時間捻り出さないとなあ……今日も残業だな、こりゃ」


「忙しいのは分かってますけど何とかお願いします。部長ー!承認印押すまで今日帰らないで下さいね!」


 部長席に向かって笑顔で叫ぶと井出島部長が分かったというように片手をあげる姿が見えた。


「あと定時であがるはずだったのに、残業を余儀なくされた立岡さんに奢ってあげてくださーい」


「お前、部長相手に何て事を……」


「井出島部長、洒落の分からない人じゃないですよ」


「ったく美人は得だねー。井出島さんは篠塚に甘いなあ」


 立岡さんが呆れた様に肩をすくめる。
 立岡さん自身も私に甘いって一部で言われてるはずなのだけれど、本人に自覚はないらしい。

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