それが愛ならかまわない

「飲みに行く?」


 長嶺さんが右手の親指と人差指でグラスを持つジェスチャーをする。二日前に先日の約束の通り飲みに行ったというのに。とにかく酒好きなこの人は、噂によると毎日飲む相手を探しているらしい。
 誘ってもらえるのは有難いけれどバイトがあるし、とてもじゃないけれど私の財布は長嶺さんのペースについていけないので苦笑いで答える。


「すみません、今日は予定があるんですよ」


「何、もしかしてデート?」


「残念ながら違います。デートする相手がいるなら金曜に残業なんかしないですよ」


「ならいいけど。……じゃあ椎名つきあわねえ?」


「────え」


 長嶺さんが急に後ろを振り返ってそんな言葉を発したので、心底驚いた。


 彼の視線を辿ると、確かに少し離れた位置を椎名が歩いている。暗いし背後なんて見ていなかったので全く気が付かなかった。二人は同じ部署のはずだから、同じ仕事で残業でもしていたんだろうか。
 必然的に駅までの道のりをこの面子で向かう事になる。

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