それが愛ならかまわない
二段分高い位置から振り返った椎名がこちらに向かって言う。見下されているみたいであまり気分は良くない。
「同期なのに何も喋らないのも不自然でしょ」
「長嶺さんはそこまで気にしてないと思うけど」
あの日の昼、私は長嶺さんの目の前で椎名に話しかけた。一週間後に口も利かない仲になっているのは何かあったと言ってるようなものだ。
まあ確かに長嶺さんが今日の私達を不自然に思った様子はなかったけれど。
「でも変に避けないでいいから普通にしてて」
「はいはい」
ホームに辿り着くと同時に電車が滑り込んできた。避けるなと言ったせいか椎名は素直に同じ車両に乗り込んでくる。
「バイトは?」
「今から行く」
珍しく椎名の方から声をかけてきたけれど、それ以上のやりとりはなく会話は途切れた。