それが愛ならかまわない
「金が欲しいなら何で水商売を選ばなかったんだ?その方が手っ取り早く金になるだろ」
「……それは……」
椎名の質問は最もだ。
けれどそれに答えるとこれ以上は本当に言わなくていい事まで言ってしまいそうで危険だった。
頭の中で必死に話せるボーダーラインを探す。
「普通の会社員としての仕事と水商売を両立させるのは難しいでしょ。ろくに寝ずに仕事行くなんて嫌だし」
これは嘘じゃない。
今の店は閉店時間が深夜十二時と決まっていてその時間できっちり家に帰れるので、立ち仕事故の脚の疲れ以外は翌日の仕事に響かない。時間帯的にそれなりに時給も良い。
きちんと正社員としての仕事をこなした上で得られる副収入を色々考えた上で選んだバイト先だった。今のアパートを移らないのも家賃を少しでも浮かせる為だ。
「……結構今の会社と仕事気に入ってるんだな。少し意外」
「入りたくて入ったんだから当たり前」