それが愛ならかまわない

 予想通り着信履歴にずらっと並ぶ、母親の名前。
 ため息を一つついて、私は再びそれを鞄へと戻す。


『────ごめんなさい、私のせいで』


 思い出したくない科白が記憶の中から浮かび上がる。
 謝るくらいなら負担を減らす努力をすればいいのに。何も出来ないくせに、人の顔色を伺うような事をしないで欲しい。


 あと少し。少しだから。あと少しでこんな生活も終わるから。
 今はまだそっとしておいて。


 あと少しだと自分を励ます事で気力が湧いてくる。
 毎日じゃないとは言え、普通にフルタイム働いた上でバイトなんて体力的にキツいに決まってる。けれど誰にも弱音なんか吐きたくない。自分自身でケリをつけて自由になりたい。
 その反骨心とプライドだけが、今の私の支えだった。










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