それが愛ならかまわない

 視線を前方へと向けると、あの日と同じガードレールに椎名が腰掛けている。
 私が彼の姿を認めると同時に椎名も私に気がついたようで、小さく彼は片手を上げた。何となく近づいて、その隣に腰掛ける。


「何してるの、こんな所で」


「弁当の出来上がり待ってる」


 そうだ。そう言えばうちの店の隣は椎名が愛用している弁当屋だったっけ。
 周囲には同じようなサラリーマンが椎名と同じ様に店を眺めながら待っている。結構な人気店らしい。


「ここ、美味しいの?」


「それなりに。買って帰って食べてみれば」


「バイトの後は食べない主義」


 深夜の食事は美容の敵だ。バイト後に空腹を感じる日ももちろんあるけれど、自制するようにしている。
 椎名は私の言いたい事を察したのか軽く肩をすくめた。


「休憩中?」

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