それが愛ならかまわない
「うん」
「お疲れ」
さらりと言われた一言に、ついこの間まで名前も知らなかったのにこんな挨拶を交わす程度には親しくなったのかと少し不思議な気がした。食堂での椎名より多少口数も多い。
私は椎名に抱かれた。思い出そうとすればはっきりと思い出す事が出来るのに、同じベッドに入った者同士とは思えない程今の私達の間には色気めいた雰囲気がない。
顔を合わせてもあの夜の事を口にする事がないせいだろうか。
いつの間にか椎名も長嶺さんなんかと同じ様に気を遣わなくてすむ気楽な間柄になっている。
「そうだ、この間のあれ!」
「は?何」
「食堂で、笑ったでしょ」
「覚えてない」
「絶対覚えてるくせに」