それが愛ならかまわない
「社員じゃないと管理者アカウントにログイン出来ないだろ」
「それは知ってるけど……でも何で椎名に」
「たまたま俺が総務の前通ったから」
システム管理部と連絡がつかず溝口さんが困っているタイミングでたまたま椎名が傍を通り、彼女は知っている顔があったから助けを求めたらしい。
でもうちのフロアにも残っている社員誰か一人くらいいたはずだと思うんだけど。
あえて一度ちらっと喋っただけの他部署の人間に声をかけるなんて、彼女は見た目によらず意外と積極的だ。あの時は冗談ぽく話していたけれど、実は本気で一目惚れでもしたんだろうか。あの時の様子からして安田君が溝口さんに、というならまだ分かるのに。
「まあ溝口さん、椎名の事格好良いって言ってたしね……」
思考を巡らせていると、ポロッと口が滑った。
余計な一言だったと焦ったけれどもう遅い。椎名の話と繋がっていないし、こんな事言うつもりじゃなかったのに。
けれどどう言えばフォローできるのかも思いつかない。慌てている私の心境すら椎名には見透かされている気がして、それが余計に焦りを加速させる。
「ふーん」