それが愛ならかまわない
「大変だなー、苦労してるんだろ」
「……誰のせいだと……っ」
声が震えてるのが自分でも分かった。
熱くなるな。こんな奴の為に怒りのエネルギーを使う事すら勿体無い。そう分かっていても、冷静さなんか保てない。
何だか最近私怒ってばかりいる。どこかの冷静な部分がそう考えているけれど、頭に昇った血はそう簡単に冷めてくれない。
「誰のせい?俺は強要したわけじゃない。判を押したのはお前の親だろ」
そんな事分かってる。
だから悪質な訪問販売の手口だと分かってもどうしようも出来なかった。購入の意志を決めたのは私の母親だ。
「それにお前が家に連絡しなかったのは俺の責任じゃないよ」
「……っ」
分かってたくせに。
私がイギリスでのホームステイで二ヶ月不在だと分かっていて、別れた私の実家に何食わぬ顔して上がり込んだ。別れた事を知らなかった母親を言葉巧みに誘導して、就職の為に新規顧客が必要だとか何とか困ってるふりをして身の丈に合わないローンを組ませた。
電話一本よこさない程現地での生活に夢中になっていた私が日本に戻って来た時には、クーリングオフの期間なんかとうに過ぎていた。だから、どうしようもなかった。