それが愛ならかまわない
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人の顔を見るなり椎名は大きくため息をついた。
まあ言いたい事は分かる。きっとまたこのパターンか、とでも思ったんだろう。多分逆の立場なら私も同じ事を考えたはずだ。だからそのため息にケチをつけるつもりはない。
だって仕方ない。私は椎名の連絡先を知らない。そして夜はバイトが入っている。よっていつぞやのように昼休みに廊下で待ち伏せして捕まえるしかなかった。それが椎名にとって迷惑でも。
昨夜あんな別れ方をしてしまったのだ。路上に残してきたままの二人がどうなったかが気になって、このままでは仕事に集中できそうもなかった。
前回と違うのは、一瞥しただけで私の意図を飲み込んだ椎名がすぐ外に向かってくれたので、面倒臭いやり取りがなかった事だ。
結局今私達は矢吹さんの店perchのカウンターに並び、キーマカレーを食べている。
前回はランチタイムに訪れたのは私達だけだったけれど、今日は他に二組程別客の姿があった。
「でもなんだかんだ付き合い良いよね、椎名って。結局いつも着いてきてくれる」
私がランチに連れ出した時も夕飯の約束を強引に取り付けた時も拒否はされなかった。同期会にも出席しているし、石渡君達と昼を食べたりもしている。あれはまさか椎名から誘ったわけじゃないだろうから、多分石渡君主導なんだと思う。それでも律儀に参加するあたり、面倒臭がりに見えて意外と椎名は付き合いが良い。その辺りが妙に一緒にいて居心地の良い理由かもしれない。