それが愛ならかまわない

「……当然。据え膳食わぬは男の恥」


 そんな覇気やバイタリティがあるタイプにはとても見えないけれど。ついでに言うと椎名は女の好みにうるさそうだし、その中に私が入っているとはとても思えない。
 最初はただで女を抱けるわけだし、色々取り乱している私を面白がっていたから話に乗ってきたんだと思っていた。
 でも最近は少しだけ違う理由が頭をよぎる。あの晩椎名が私の戯れ言に付き合ったのは、彼なりの優しさかもしれないとも思うのだ。あの選択が正しかったとも後悔がないとも言い切れない部分は今もあるけれど、何よりあの夜のやりとりを経て私は頭を冷やして自分を立て直せた気がするから。もし浅利さんとは別れ、椎名とは出会わずじまいの状態で北見先輩に遭遇していたら私は上手く切り抜けられただろうか。


「ねえ、あの後北見先輩何か言ってた?」


 一番聞きたかったのはそこだ。
 ぐいと身体を乗り出した私に一瞥を寄越すと、椎名は横を向いたまま答える。


「別に。すぐあそこから離れたし大した事は何も」


「本当に?」


「何の面識もない他人同士が何話すんだよ。弁当冷めるしさっさと帰った」


「でも……」

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